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田原総一朗 「野党に対案がないということを若い世代は敏感に感じ取っている」

田原総一朗さん30日毎日連載 Q8.選挙権が18歳に引き下げられて初めての国政選挙である参議院選挙についてどうお考えですか?

『変貌する自民党の正体』(ベスト新書)を上梓。常に第一線のジャーナリストとして活躍したきた田原総一朗氏に話を聞いた。

 Q8.選挙権が18歳に引き下げられて初めての国政選挙である参議院選挙についてどうお考えですか?

 

 ニュースでは高校などでも模擬投票を行って、やり方を教える様子が映し出されていた。総務省が一部の市区町村を抽出して調査した、18歳と19歳の投票率は45.45%と発表されている。全体の投票率の54.70%よりも9.25ポイント下回っているけど、僕はこれは決して低くない数字だと思っていますよ。
 それよりも僕なんかが感じるは、この世代が意外と保守的なんだなということ。新聞の世論調査だと、この世代の50%が自民党に入れているんだよ。
 これはやっぱり野党に対案がない、具体的な主張が感じられないということを、若い世代も敏感に感じ取っているんだろうね。
 昔は、若者はもっと反権力的だったと言われている。確かに学生運動をしている連中も多かったけど、みんながみんなそうだった訳じゃない。
 僕ら全共闘世代の理想は社会主義だっけれど、冷戦が終わって幻想だったということがわかったんだ。僕だって具体的に1965年では社会主義がいいと思っていたんだから。日本では共産党が最後まで戦争に反対した政党だったから、畏敬の念も感じていたしね。
 ところが、この1965年に当時ソ連のモスクワで「世界ドキュメンタリー会議」というのがあって、なぜか僕が日本代表で招待されたんです。その直前にフルシチョフが失脚していたから、モスクワ大学の学生たちと討論したいと申し出たらOKが出た。それで僕が「なぜ、フルシチョフは失脚したのか」と話を振ったら、学生たちは、もう真っ白になっちゃった。横からコーディネーターも青くなって「そんなことを聞いちゃいけない!」と。僕は、当時のソ連には言論表現の自由が全くないことがわかった。
 その出来事で僕は「社会主義はダメだ。こんなものはぶっ潰しちまえ!」と思うように(笑)。
 当時の若者、と言っても僕はもう31歳だったけど、社会主義は憧れ、ユートピアだったんだよ。今の20歳以下の世代だって、世の中を何とか変えたいと思っている人たちはたくさんいるはずです。現に反原発、平和憲法改憲反対と叫んでいる学生たちの集まりだってある。
 ただ、一般的な若者はどうしていいのかがわからない。少し関心がある人にとっては、野党が政府に対抗するだけの案やモデルケースを示せないから、現状維持で十分と、保守傾向になるんだろうね。

*

明日の第九回の質問は「若者はもちろん、人々にもっと政治に目を向けさせるにはどうしたらいいでしょうか?」です。

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田原 総一朗

たはら そういちろう

ジャーナリスト。1934年滋賀県生まれ。60年早稲田大学文学部卒業。同年岩波映画製作所入所。64年東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数。著書に『日本の戦争』(小学館)、『塀の上を走れ 田原総一朗自伝』講談社)、『安倍政権への遺言 首相、これだけはいいたい 』(朝日新聞出版)など多数の著書がある。


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