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腸活をすれば3つの老化現象を防げる

腸年齢と老化の関係とは?

腸が若ければ動脈硬化、骨粗鬆症、肌の老化は防げる

 

理化学研究所で40年以上腸内細菌の研究を続けてきた辨野義己さんによれば、腸年齢と老化には深い相関関係があると指摘する。腸内細菌のバランスは、善玉菌2:悪玉菌1:日和見菌7の割合が理想的とされているが、一般的に60歳を過ぎると善玉菌であるビフィズス菌が急激に減少し、悪玉菌のウェルシュ菌、大腸菌、腸球菌などが増えてしまう。これは、老化に伴っていろいろな生理機能が低下した結果、食べた物が長く腸内に留まって腐敗が進行し、悪玉菌にとっては都合のいい環境になるためだ。その結果、8割方の人の腸に多くの悪玉菌が検出されるようになる。

 

腸内細菌が棲みついている腸粘膜の細胞は、3日に1回生まれ変わるが、一定の回数以上分裂・増殖を繰り返すと、どうしても機能は衰える。また、年とともに腸を支えていた筋肉や脂肪が落ち、腸のぜん動運動が緩慢になって食べ物の残りカスが長く腸内に留まりやすいことも腸内環境を悪化させる原因だ。悪玉菌が優勢になると便は臭くなり、免疫力の低下により有害物質が腸管から吸収されて老化が加速するという悪循環に陥ってしまうのだ。年を取ると細長くヒョロヒョロした便が出る場合があるが、これも老化によるもので「老人性賽便」と呼ばれる。

 

「そうはいっても実際の年齢と腸年齢で、ずいぶん開きのある人も多いんです。ちゃんと腸内環境を整える生活をしていれば、60代になっても腸は老化しないのでご安心ください。腸年齢が若いと肌がきれいで見た目も若く、体力や気持ちも衰えを感じません。実際私も、腸内環境がよくなってから多くの人に『若返った』と言われるし、疲れにくくなり、仕事の集中力もアップしました。腸年齢チェックテストで腸年齢が高かった人は、生活を見直しましょう」(辨野さん)

 

腸は、脳の機能とも密接に関係している。〝腸脳相関〟と呼ばれ、ストレスから下痢になる過敏性腸症候群がその代表的な例だ。逆に腸内フローラの乱れから、不安感が増して眠れなくなったり、気分が落ち込むこともある。

 

辨野さんの研究でも、腸内細菌が脳に大きな影響を与えることが明らかにされた。無菌マウスの実験で大脳皮質を調べたところ、脳内物質の濃度が通常マウスとは異っていたという。今後さらに研究が進むと、高齢者に多いアルツハイマー型認知症やパーキンソン病の治療への応用も期待できる。「最近物忘れが激しい」と嘆く諸氏も、もしかしたら原因は腸の老化かもしれない。

 

大豆製品やチーズ、ヨーグルトなどにも含まれ、最近話題のポリアミンも、腸内細菌が生成に関わっている。ポリアミンが増えると腸が若返り、全身の老化防止に役立つそうだ。さらに動脈硬化や骨粗しょう症、肌の老化を防ぐのにも、腸内細菌が一役買っている。

 

「40年以上も腸を研究し、8000人以上の便の腸内細菌を調べ、143項目にも及ぶ生活習慣のアンケート調査を行ってきました。これからは、日本人の健康意識を上げるために、研究の成果を役立てたい。ただし、健康は目的ではなく、あくまでも夢を実現するための手段です。腸内環境がよく、いいうんちが出ている人は、年を取っても前向きです。地域や友人とも積極的に関わり、人生の目的を持って生きることは、老化しない心と体に繋がるんですね」

 

カンタン腸年齢チェック

◻️便秘気味、または時々下痢をする
◻️便は硬く、気持ちよく出ない
◻️便の色が茶褐色や黒っぽい
◻️オナラや排便後の匂いがきつい
◻️野菜が嫌い、あまり食べない
◻️肉食や外食が多い
◻️牛乳や乳製品が嫌い、ほとんど口にしない
◻️運動不足を自覚している
◻️顔色が悪く、肌につやがない。老けて見える
◻️ストレスが多く、飲酒や喫煙量がかさむ

判定
9個以上/腸年齢は老人状態
6〜8個/悪玉菌増加、不調のおそれあり
3〜5個/生活改善が必要
1〜2個 /腸年齢=実年齢
      0個/腸年齢は若く、善玉菌優勢

 

監修:辨野義己さん
理化学研究所イノベーションセンター推進センター特別招聘研究員
1948年。大阪府生まれ。農学博士。専門は腸内環境学、微生物分類学。DNA解析により、新たな腸内細菌を発見し続けている。『免疫力は腸で決まる』『腸内フローラが病気を防ぐ』など著書多数。

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