<放送法遵守を求める視聴者の会>
 小川 榮太郎(文藝評論家、放送法遵守を求める視聴者の会事務局長)
 上念 司(経済評論家、放送法遵守を求める視聴者の会 呼びかけ人)
 ケント・ギルバート(米カルフォルニア州  弁護士、タレント、放送法遵守 を求 める視聴者の会 呼びかけ人)

 
 まず、「視聴者の会」事務局長・小川榮太郎氏が、「放送法(第4条)」について簡単に説明したあと、2013年の「特別秘密保護法案」、昨年2015年の「安保法制」時にテレビ各局がこのテーマについて両論をきちんと放送したかを、「時間比較」したデータを発表した。そのデータによると「特別秘密保護法案」時には、「賛成」の報道が26%、「反対」の報道が74%、「安保法制」時には、「賛成」の報道が89%、「反対」の報道が11%だったという。これでは、視聴者(国民)に一方的な意見しか提供していないのではないか、賛成側の意見(「なぜこの法案が必要なのか?」「どうゆう国際情勢の変化で、この法案がつくられたのか?など)が視聴者(国民)に伝えられなくては、判断のしようがないのではないか、と小川氏は発言した。

 

 
 <テレビ報道検証の図表>

 
 これに対し、「研究者有志の会」の醍醐聰は、重要なのは「賛否バランス」ではなく、情報の「質」と充実した「調査報道」が要である。だから、単に「賛成」「反対」の時間を計っても意味がないという。
 たしかに、醍醐氏の指摘どおり、テレビ局にはもっと報道の「質」を高めてもらいたい。異存はない。しかし残念ながら、現在のテレビの報道番組には「質」を高める以前の問題がある。明らかな「誤報」「捏造」「歪曲」、もっと言えば「洗脳」的な報道が蔓延っていることだ。この異様な状態に多くの国民がなんとなく気付いているし、これが「テレビへの不信感」、端的に言えば「テレビ離れ」につながっている。東大の先生には、この庶民の「肌感覚」がわからないらしい。いや、「視聴者の会」のデータを信じるなら、これは「肌感覚」ではなく、「事実」である。全テレビ局が9割の時間を使って「安保法制」を批判した。「9対1は気持ち悪い。6対4、せめて7対3の割合いで賛成・反対の意見が聞きたい」―と視聴者が思うのは自然なことではないだろうか。
 
 そのあとに、「研究者有志の会」の砂川氏と岩崎氏が「憲法と放送法」「表現の自由」などについて発言。「視聴者の会」の上念氏とケント・ギルバート氏は「業界団体アライブ」「GHQのウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム」などについてそれぞれ見解を述べた。
 

 テレビは権力か、否か

「ジャーナリズムの使命は権力の監視である」「マスコミは第4の権力である」この、よく聞くふたつの言葉は、矛盾している。矛盾というか、マスコミが「権力」であるならば、そのマスコミは誰が監視するのか、という問題がある。監視団体のBPOは果たして機能しているのか―。そろそろ考えるべきときに来ている。

 テレビをはじめ、マスコミは、自身が「監視される」ことを嫌う。それは「言論の自由への挑戦」「民主主義への挑戦」だと言う。―今のテレビにそう言う資格があるのか? 公開討論を聞きながら、感じたことである。