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日本の就活はなぜこんなに苦しいのか? 諸外国と比較して分かった独特のキャリアプランニング

日本の就職活動、採用方式の「変」なところ

日本の就職活動やキャリアプランニングには、欧米諸国にはない困難が潜んでいた――。その特異性とはなんなのか、『夢があふれる社会に希望はあるか』の著者、児美川孝一郎先生に聞いた。

 

●日本のキャリアに対する価値観は、実は変わっている

 

 日本では、学校教育の現場で行われているキャリア教育の在り方に象徴されるように、職業選択や人生設計をする上で、「夢」であるとか「やりたいこと」を重視する傾向にある。つまり、自分の興味・関心に従ってキャリア設計をするべきだという風潮があるのだ。
 しかし、欧米諸国のキャリア設計方法は、日本とはまるで異なっていることを知っている人は、実はあまり多くない。

 子どもや若者が将来の夢や野望を抱いたりすることは、大人社会からたいてい微笑ましく受けとめられ、夢を追う若者の姿を描く小説が書かれたり、ドラマや映画が製作されたりもする。このあたりの事情は、日本も欧米もそれほど違わない。
 しかし違いがないのは、当事者である若い人たちが青年期を迎える前までのことである。それ以降の年齢段階になると、欧米の若者たちは、素朴な夢というよりは、より現実的な将来展望を描くようになる。また大人の側も、それを求めていると言ってよいだろう。
 大学生にもなって、あっけらかんと漠然とした夢を語ることができるのは、恵まれた高い家庭階層の子弟のみ。言ってしまえば、エリート層の若者くらいなのである。大多数の庶民層の若者は、もっと堅実な道をめざしていく。つまり欧米では、キャリア設計をするうえで、夢を持つことに価値がほとんど置かれていないのである。逆に、日本社会に蔓延しているキャリアに対する考え方の方が、欧米からしてみれば変わっているのかもしれない。

 では、欧米社会はどのようにして、若者たちの夢や野望をクールダウンしているのか。なぜ「やりたいこと」はキャリアにおいて重要視されないのか。その理由は二つあると、僕は考えている。

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児美川 孝一郎

こみかわ こういちろう

1963年東京都の生まれ。東京大学教育学部、同大学院教育学研究科博士課程を経て、96年より法政大学に勤務。2003年よりキャリアデザイン学部助教授、07年より同教授(現職)。専攻は、教育学(青年期教育,キャリア教育)。日本教育学会理事、日本キャリアデザイン学会副会長。主な著書に『若者とアイデンティティ』(法政大学出版局)、『「親活」の非ススメ』(徳間書店)、『キャリア教育のウソ』(ちくまプリマー新書)、『まず教育論から変えよう』(太郎次郎社エディタス)等がある。


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  • 2016.04.09