6組に1組の夫婦が行なっている不妊大国、日本のリアル |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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6組に1組の夫婦が行なっている不妊大国、日本のリアル

現在観測 第33回

 最近、不妊治療をめぐって地方自治体が助成金制度の設立や、金融庁が高額な不妊治療の費用をカバーする保険商品の販売を解禁する方向で調整していたりするニュースをご覧になった方もいるのではないでしょうか。それは、人々のなかで不妊治療のニーズが高まっていることの現れでもあります。
 そこで、昨今の不妊治療をめぐる概況を読み解き、その狭間で揺れ動く「家族」の在り方について明治大学商学部の藤田結子准教授にご寄稿いただきました。

 

高齢出産するアメリカのセレブたち

 2016年5月上旬、ジャネット・ジャクソンが49歳で妊娠したというニュースが駆けめぐりました。彼女にとっての初めての妊娠。5月16日に誕生日を迎え、出産時は50歳です。
 同時に、他人の卵子を用いた妊娠だと噂されています。45歳を過ぎて出産するアメリカの芸能人は珍しくありません。たとえば、女優のハル・ベリーは47歳で娘、ホリー・ハンターは47歳で双子、ジーナ・デービスは48歳で双子を出産しています。彼女たちは明言していませんが、おそらく卵子提供による妊娠だろうといわれています。
 女優や歌手など若さが求められがちな職業では、20~30代の妊娠しやすい時期にキャリアを優先せざるをえないという事情があるようです。そのため、40代で仕事が落ち着いてから妊娠・出産となるのです。
 アメリカでは40代になれば、卵子提供での体外受精をすすめられるとことが多いといいます。費用は1回500万円以上、ドナーは主に20代の女性です。名門大学の女子学生は学費返済のために卵子を提供し、高額な報酬を受けているという話も聞かれます。産む側も、アメリカでは養子や子連れ再婚によるステップ・ファミリーが一般化しているため、自分と血縁のない子どもを持つことに抵抗は少ないようです。
 日本国内では、卵子提供での体外受精は一般的でなく、年に数十件しか実施されていません。希望者の多くは海外に渡って治療を受けています。国内でも卵子提供が広く行われるようになれば、40半ばを過ぎても出産可能性が高まります。こういった不妊治療の進展は、日本で不妊に苦しむカップルに希望を与えるのでしょうか。

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藤田 結子

ふじた ゆいこ

明治大学商学部教授。東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒、米国コロンビア大学大学院で修士号を取得後、英国ロンドン大学大学院で博士号を取得。2016年から現職。専門は社会学。調査現場に長期間、参加して観察やインタビューを行う研究法を用いる。日本や海外の文化、メディア、若者、ジェンダーなどについてフィールド調査をしている。著書に『ワンオペ育児』(毎日新聞出版)など。


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