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箸墓古墳に眠る人物を明らかにするための課題

果たして卑弥呼の墓なのか?箸墓古墳の謎 第7回

纒向(まきむく)遺跡の中にある箸墓(はしはか)古墳は果たして卑弥呼の墓なのか?今回が最終回!出土品や最新の測定法から、その謎に迫る。

 

箸墓古墳に眠るのは卑弥呼か、壱与か

 ここまで述べてきた箸墓古墳の被葬者像をより鮮明にするためにも次の問題を解決する必要がある。まず、放射性炭素年代測定以外の方法で年代測定し、箸墓古墳の造営された布留0式期の年代を明らかにしていく必要がある。次に、卑弥呼の墓と考えるならば、卑弥呼のいた邪馬台国の所在地を明らかにすることである。邪馬台国の場所が不明であっても、箸墓古墳に隣接し、軸線や方位を揃えて建てられた古墳時代前期の大型建物群が確認されるなど、調査の進む纒向遺跡の性格が解明されることでその被葬者像が明確になってくるかもしれない。仮に邪馬台国が奈良盆地にあったとしても、卑弥呼の死後に共立された壱与(いよ、台与)やその次に即位した男王の墓である可能性も残るが、これについては被葬者の葬られている主体部を含む墳丘内の調査が進むことで、ある程度解明されるだろう。

 箸墓古墳に眠るのは邪馬台国の女王卑弥呼なのか。あるいはその後継者である壱与(台与)、男王なのか。いずれにせよ箸墓古墳の築造後数百年経過した8世紀に編纂された『日本書紀』にまでその造営の話が伝えられているということは、被葬者が非常に重要な人物であったことを物語っているのだろう。

 

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北井 利幸

きたい としゆき

1978年兵庫県西宮市生まれ。龍谷大学大学院博士後期課程単位取得退学。現在、奈良県立橿原考古学研究所附属博物館主任学芸員。主な研究テーマは弥生時代の墓制。

 


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