消費増税は必要なし!ましては財政を健全化するのは当たり前だと考えてきた経済学者や官僚、政治家、そして朝日新聞までもMMT(現代貨幣理論)に対する批判が日々高まっている。
「確かに、異端の学説ですよ。財政健全化をよしとする主流派経済学の見解とは、180度も違います。でも、主流派経済学に基づく経済政策では、ちっともうまくいかず、二十年も経済が停滞しているのだから、MMTについて、もっとまじめに考えてもよさそうなものです」と語るのが評論家・中野剛志氏。
 MMTの詳細は近著『目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】』でこれ以上ないくらいに分かりやすく解説されている。
 なんと山本太郎議員が地方遊説先で本書を現代の必読書と公言しているのも驚きだ。
 一方で、聞く耳すらもたずにMMTを一蹴する人ばかりが湧いてでてきたのも印象的。なんで、そこまでしてMMTを嫌うのでしょうか。その心理を中野剛志氏は、実に明快かつ象徴的な学説をもとに、これ以上ないくらいの分かりやすさで解説してくれた。緊急寄稿第7弾を公開。

MMTを否定すると、ハイパーインフレになるおそれがあります!

中野剛志

 MMT(現代貨幣理論)には、相変わらず、たくさんの批判が寄せられています。しかし、まともな批判はひとつもありません。今日は、その中から、特に酷かった例を採り上げてみましょう。

 日本経済新聞「大機小機」(2019年6月5日)に「MMTと南海トラフ地震」を書いた「手毬」さんのMMT批判です。

「手毬」さんは、「(MMTは)独自の通貨を持ち、自国通貨建てで借金できる国は、インフレにならない限り、財政赤字や国債残高を気にせずに財政支出を増やせる、と説く」と述べています。
 これはその通りです。

 しかし、例によって、「手毬」さんも「MMTの危うさは、インフレになりかけたら、歳出削減や増税をすればよいと、いとも簡単に片付けるところだ。平時でも難題だが、緊急時にやれることではない。」と、お決まりのMMT批判を披露しています。
 このようなMMT批判が、誤解に基づくものであることは、『目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】』の中でも書きましたし、こちら(参考)でも書きました。

(参考)MMT「インフレ制御不能」批判がありえない理由

 さて、「手毬」さんは、テンプレのMMT批判を得意そうに披露した後で、MMT論者をこう詰問しています。

「MMT論者に次の2点を確認しておきたい。(1)南海トラフのような巨額の潜在的財政需要を抱えている事情を知っても、なおMMTを勧めるのか
(2)財政赤字が増えるにまかせて南海トラフ地震に遭遇しても、財政破綻の引き金にならないと断言できるのか。」

 では、順番にお答えいたしましょう。
 もっとも、MMT論者でなくても、普通に考えれば、こういう答えになると思いますが。

(1)南海トラフのような巨額の潜在的財政需要を抱えている事情を知っても、なおMMTを勧めるのか

 はい、勧めますね。
 それどころか、南海トラフ地震の可能性があるからこそ、いっそうMMTを勧めるのです。
 南海トラフ地震対策のために公共投資を行う必要があるからです。そんなこと、当たり前でしょう。
 MMT以前の話として、国家として、防災対策によって国民の生命を守るのは、当然のことではないですか。
 仮にインフレであったとしても、防災対策は、やらなければならないものなのです。
 しかも、日本はデフレなのだから、財政赤字を拡大しても問題ない。問題ないどころか、財政赤字を拡大してデフレを脱却すべきなのです。
 南海トラフ地震対策とデフレ脱却の両方が達成できるというのに、何をためらう必要があるのでしょうか。       

(2)財政赤字が増えるにまかせて南海トラフ地震に遭遇しても、財政破綻の引き金にならないと断言できるのか。

「財政赤字が増えるにまかせて」って言いますが、MMTは、財政赤字をいくらでも増やしていいという主張ではありません。2~4%程度の適度なインフレ率になるまでなら、財政赤字を拡大していいという理論です。
 なので、とりあえず4%のインフレ率という「正常な経済」に戻った段階で、南海トラフ地震に遭遇したとしましょう。
 もちろん、地震で供給能力は破壊され、復興需要が生じるので、高インフレになるでしょう。
 MMTも、供給が需要に追いつかなくなればインフレになるとしています。どの程度のインフレになるのかは、もちろん、地震の規模にもよります。ちなみに、東日本大震災では、あれほどの大災害でも、インフレにはなりませんでした。

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