消費増税は必要なし!ましては財政を健全化するのは当たり前だと考えてきた経済学者や官僚、政治家、そして朝日新聞までもMMT(現代貨幣理論)に対する批判が日々高まっている。
「確かに、異端の学説ですよ。財政健全化をよしとする主流派経済学の見解とは、180度も違います。でも、主流派経済学に基づく経済政策では、ちっともうまくいかず、二十年も経済が停滞しているのだから、MMTについて、もっとまじめに考えてもよさそうなものです」と語るのが評論家・中野剛志氏。
 MMTの詳細は近著『目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】』でこれ以上ないくらいに分かりやすく解説されている。
 なんと山本太郎議員が地方遊説先で本書を現代の必読書と公言しているのも驚きだ。
 一方で、聞く耳すらもたずにMMTを一蹴する人ばかりが湧いてでてきたのも印象的。なんで、そこまでしてMMTを嫌うのでしょうか。その心理を中野剛志氏は、実に明快かつ象徴的な学説をもとに、これ以上ないくらいの分かりやすさで解説してくれた。緊急寄稿第6弾を公開。

なんで、そこまでしてMMTを嫌うのでしょうか?

中野剛志氏。

 昨今、話題沸騰のMMT(現代貨幣理論)は、「自国通貨を発行する政府はデフォルトに陥ることはあり得ないから、高インフレにならない限り、財政赤字を拡大しても問題ない」という単純明快な理論です。
 日本は自国通貨(円)を発行し、国債をすべて円建てで発行していますから、デフォルトすることはあり得ません。

 しかも、高インフレどころか、その反対のデフレです。

 したがって、MMTによれば、日本は、何の心配もなく、財政赤字を拡大できるというわけです。

 

 日本は、長い間、財政赤字に悩んできました。

 それが、財政赤字を心配しなくていいという理論が登場したのですから、「ヒャッハー!これからは、貧困対策とか、少子高齢化対策とか、いろんなことのために予算が使えるぞ」と喜ぶ人がたくさん出そうなものです。
 ところが、実際には、みんなで一斉にMMTをバッシングしています。

 これでは、悪性腫瘍を心配していた患者が、「悪性ではないから、安心してください」と診断してくれた医者を非難するようなものです。

 

 MMTは、確かに、異端の学説ですよ。財政健全化をよしとする主流派経済学の見解とは、180度も違います。
 でも、主流派経済学に基づく経済政策では、ちっともうまくいかず、二十年も経済が停滞しているのだから、MMTについて、もっとまじめに考えてもよさそうなものです。
 それなのに、聞く耳すらもたずに一蹴する人ばかり。

 なんで、そこまでしてMMTを嫌うのでしょうか。

 心理学によれば、その理由は、二つ考えられます。

 

 一つ目の理由は、言葉の表現の問題です。心理学には、メタファー(比喩)が人々の思考に及ぼす影響についての研究があります。[1]

 その研究では、次のような実験が行われました。
 実験の参加者を二つのグループに分ける。片方のグループは、「犯罪は、市民を襲う野獣のようなものである」という説明を読む。もう片方のグループは、「犯罪は、市民を病気にするウイルスのようなものである」という説明を読む。その上で、市の犯罪を減らすにはどうしたらよいかと質問する。
 すると、「犯罪は野獣」という比喩の説明を読んだグループは、「警官を雇い、刑務所を用意して、犯罪と戦うべきだ」と答える傾向にあった。

 これに対して、「犯罪はウイルス」という比喩の説明を読んだグループは、「犯罪の根本原因を調査した上で、社会を改革すべきだ」と答える傾向にあった。

 このように、犯罪を「野獣」というメタファーで表現するか、「ウイルス」というメタファーで表現するかによって、犯罪の捉え方やその対策についての思考パターンに大きな違いが生じたのです。この実験から明らかなように、人間の思考は、論理だけではなく、言葉の表現によっても大きく左右されるのです。