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「在宅介護は愚かな選択。施設介護が正解」そんな断定意見への違和感

【隔週木曜日更新】連載「母への詫び状」第四十二回

■介護で見つかる幸せもある。

 そして実際に介護してみたら、想像していたような辛いことばかりではなく、楽しい出来事や幸せな発見がたくさんあった。疎遠だった親と向き合い、もしかしたら初めて親子らしい関係を築くことができた気がした。

 だから「在宅介護は愚かな選択。介護施設に預けるのが正解」という断定的な意見にだけは、「それは違うと思いますよ」と答えておきたい。たとえ素人でも、介護施設より手厚くできる部分はある。たとえ専門家でも、素人より気が回らないマイナスはある。それが家族の強みだ。

 結局、ぼくの介護はおよそ6年間に渡った。

 前半の3年は、認知症の父と、病気で入退院を繰り返す母の両方を看た。

 後半の3年は、母とふたりきりで自宅介護の日々を送った。

 連載の初期に綴った母との思い出ばなしは、ほとんど後半の時期のものである。時系列でいうと、介護の後期の話はすでに連載の中に書いてある。

 順序が入り乱れてわかりにくいのは、父を見送るまでの3年間はノンフィクションふうに書けるのに対して、母と過ごした自宅介護の3年間は今もまだ記憶が生々しく、断片的なエッセイでしか振り返ることができないためだ。順を追って闘病の話を交えながら文字にするには、まだ整理がついていない。

 そんな個人的な事情はどうでもいいとして、当連載「母への詫び状」は今回でひと区切りとさせていただく。

 あらためて違う形で再開することがあるかも知れないし、加筆した上で書籍化という形になるかも知れません。きわめて個人的で感傷的な体験談を、ご愛読ありがとうございました。

 おかあちゃん、勝手に原稿にしちゃって、ごめん。

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夕暮 二郎

ゆうぐれ じろう

昭和37年生まれ。花火で有名な新潟県長岡市に育つ。フリーの編集者兼ライターとして活動し、両親の病気を受けて帰郷。6年間の介護生活を経験する。



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