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景気が悪化する中、朝日新聞がMMTを「曲論」と断定しました

アベノミクスでMMTを実践しているのに、どうして超インフレになっていないのでしょうか?

政府はいくら借金をしても財政破綻は起きない――米国で話題沸騰し、日本に上陸した「MMT」(Modern Monetary Theory=現代貨幣理論)。日本で最初にMMTを紹介したのが評論家の中野剛志氏。米国では主流派経済学者から異端視され、すでに論争の的だ。当然、日本でもMMTの破壊力は凄まじく、否定論者がわんさかと出始めた。そのうちのひとりが朝日新聞編集委員の原真人氏だ。まるで納得できない、と。お金とは? 税金とは? さらに、MMTとは何か? をこれ以上なく分かりやすく解説した新刊『目からウロコが落ちる  奇跡の経済教室【基礎知識編】』が売れまくっている著者の中野剛志氏に再度緊急寄稿をお願いした。

■ 財政赤字の問題は「大きさ」ではない!?

中野剛志氏。 

 よっぽど気にくわないのでしょうね。
 朝日新聞の原真人・編集委員が、またMMT(現代貨幣理論)をメッタ斬りにしています。

日本は「放漫財政」の実践国か アベノミクス化する世界
https://www.asahi.com/articles/ASM5B43Y4M5BULZU00K.html

 

 原氏は、MMTについて、「さぞ理路整然とした経済論文があるのだろうと思われがちだが、体系だった理論はない。いわば「放漫財政のススメ」とでもいうべき曲論である」と言いたい放題。

 いくら嫌いだからって、これは、ちょっと、ひどいなあ。

 少し調べれば、MMTの「理路整然とした経済論文」がけっこう出てきますよ。例えば、ステファニー・ケルトン(旧姓ベル)教授の論文とか。

(Stephanie Bell, ' Do Taxes and Bonds Finance Government Spending?', Journal of Economic Issues, Vol. 34, No. 3 (Sep., 2000), pp. 603-620.)

論文も一切読まずに「曲論」と決めつけるというのは、ケルトン教授らMMT論者に失礼です。

 それはともかく、原氏は、MMTは「自国通貨を発行できる政府は、通貨を際限なく発行できるから財政赤字の大きさは問題ないという主張」だと言っています。

 これは、まあ、間違いではありませんね。

 確かにMMTによれば、自国通貨を発行できる政府にとって、財政赤字の問題は「大きさ」ではありません。

 財政赤字の問題は、「インフレ率」です。

 つまり、「高インフレ」になってしまったら財政赤字は過剰、逆に「デフレ」になってしまったら財政赤字は過少ということになります。

 日本はデフレなので、日本の財政赤字は過少ということになります! 政府債務が1000兆円になろうが、GDP比政府債務残高が240%になろうが、デフレであるうちは、財政赤字は過少なのです!

「じゃあ、政府債務が5000兆円になったら?」

 そう聞かれたら、MMTは、こう答えるでしょう。

「まったく問題ないですよ。高インフレでない限りはね」

 ところが、そう答えると、「へぇ~、5000兆円でも問題ないんだって~。い~いこと聞いちゃった♪」とか言いふらす生意気な小学生みたいなのが大人でもいるので、困ったものです。

 繰り返しますが、円を発行できる日本政府の円建て国債はデフォルトしないので、財政赤字の「大きさ」を問題にしても意味がない。「大きい」か「小さい」かは、インフレ率で判断するしかないのです。

 ちなみに、日本の国債がデフォルトしないというのは、財務省も認める事実です。その証拠に、2002年に、財務省が格付け会社宛に出した質問状に、こう書かれています。

「(1) 日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない。デフォルトとして如何なる事態を想定しているのか。」

 しかし、原氏は全然納得せず、こう主張します。

「こんな政策をやって通貨価値が急落して超インフレになったらどうするのか、という批判に、MMT論者たちは「簡単には起きない。兆しがあれば、すぐに正常な財政に戻せばいい」とおおまじめに答える。放漫財政に陥った政府が一瞬にして堅実財政に立ち戻るなど、ありえそうもない。」

続けて原氏は、「どこからどう見ても、<アベノミクス=異次元緩和>はMMTの実践だ」と断定します。

 実際には、MMT論者は「量的緩和ではデフレ脱却はできない」と分かっているので、これは正確ではありません。MMT論者を、リフレ派と一緒にしないでください。

 もっとも、原氏は、日銀が国債を購入して財政赤字をファイナンスすること(財政ファイナンス)を指して「アベノミクスはMMTの実践」とも言っているので、その意味では、まあ確かに、アベノミクスはMMTの実践と言えなくもない。

 

というわけで、原氏の主張をまとめると、こうです。
MMTを実践すると超インフレになる。
しかも、超インフレは簡単には防げない。
アベノミクスは、MMTの実践である。

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中野 剛志

なかの たけし

1971年、神奈川県生まれ。評論家。元京都大学大学院工学研究科准教授。専門は政治思想。96年、東京大学教養学部(国際関係論)卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。2000年よりエディンバラ大学大学院に留学し、政治思想を専攻。01年に同大学院にて優等修士号、05年に博士号を取得。論文“Theorising Economic Nationalism”(Nations and Nationalism)でNations and Nationalism Prizeを受賞。主な著書に『日本思想史新論』(ちくま新書、山本七平賞奨励賞受賞)、『TPP亡国論』(集英社新書)、『日本の没落』(幻冬舎新書)、『目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】』『全国民が読んだら歴史が変わる 奇跡の経済教室【戦略編】』(KKベストセラーズ)。  

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  • 剛志, 中野
  • 2019.04.22