平成31(2019)年4月1日に政府により新元号が「令和」と発表され、「平成」の御代は、私たちの意識の中で次第に思い出として刻まれようとしています。平成の時代に上皇・上皇后両陛下が 読まれた和歌と国民が歩んだ出来事を対応させながら、両陛下と国民が「心で通い合った」平成30年の歴史を振り返りたいと思います。今回は、戦後最大の国難が発生した平成23年に読まれた歌を紹介します。『天皇皇后両陛下の歌から読む平成史』より紹介します)
 

 

<東日本大震災の津波の映像を見て>

黒き水うねり広がり進み行く

仙台平野をいたみつつ見る

上皇陛下

 

<仮設住宅の人々を思ひて>

被災地に寒き日のまた巡り来ぬ

心にかかる仮住まひの人

上皇陛下


手紙

「生きてるといいねママお元気ですか」文ふみに項うな傾かぶし幼な児眠る

上皇后陛下

 

 平成23(2011)年は昭和20(1945)年の敗戦以後、最大の国難を日本が迎えた年といえるだろう。3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震「東日本大震災」の発生だ。震災による死者・行方不明者は1万8000人超、建築物の全壊・半壊は30万戸以上、ピーク時の避難者は40万人以上。

 両陛下の御製、御歌も震災に数が割さ かれている。

 ところで、両陛下はどのようにして震災を知ったのか。川島裕・前侍従長の証言によれば、揺れがはじまった直後にはもう御座所(居室)でテレビに見入っていたという。「黒き水うねり広がり……」と詠んでいるのは、まさにこの時に見たテレビ映像を反映したものだ。皇后の御歌も視覚情報から詠んだものだ。津波で両親と妹をさらわれてしまった4歳の少女が母親に宛てた手紙を書きつつもその上に思わず寝入ってしまった場面を映した写真を新聞で見た時の思いが詠まれている。そしてこれまでと同じ「慰問の旅」が開始された。仮設住宅を訪れては膝を折って話を聞いた。このイメージは象徴天皇をまさに「象徴」する両陛下の姿として、日本国中の人々の記憶に深く刻まれることになる。

 またこの大震災で、「原子力発電所」の負の側面が露呈した。東京電力福島第一原発の水素爆発である。放射能汚染により地元住民の多くが避難したものの、いまだ故郷に戻れない住民がいること、国民の生命を守るべき政府の対応が十分でなかったことも記憶すべきである。

 

平成23年(2011年)はこんな年だった

◉震災を受けての新語・流行語は「絆」。受賞者は「なし」で、「ボランティアを含めた日本国民と海外から日本を応援くださったすべてのみなさま」だった。
◉年間大賞は、サッカー女子ワールドカップで初優勝を果たした「なでしこジャパン」。
◉震災で日本が後退するのを横目に、中国が国内総生産(GDP)で世界第2位に躍り出る。
◉サッカー日本代表の長谷部誠『心を整える。』がベストセラー。
◉AKB48の人気が上昇、シングルCD売り上げでトップ5を独占。

1月14日
チュニジアで「ジャスミン革命」。23年間の独裁政権が崩壊。
3月11日
東日本大震災。マグニチュード9.0は観測史上最大死者・行方不明者1万8000人超。
3月12日
福島第一原子力発電所1号機の原子炉を覆う建屋が水素爆発。大量の放射性物質が拡散し、避難指示が出される。
4月21日
ソニーのネットワークシステムで障害が発生過去最悪の個人情報流出
5月2日
アル・カイーダの最高指導者のウサマ・ビン・ラディンが米軍により殺害。
7月18日
なでしこジャパンが女子サッカーW杯決勝でアメリカを下し初の世界一。
7月24日
テレビは「地上デジタル放送」に完全移行。
8月23日
タレントの島田紳助に暴力団関係者との交際発覚で即日引退。
9月3日
紀伊半島豪雨で死者・行方不明者88人。
10月5日
アップル社の前CEOのスティーブ・ジョブズが死去(56歳)。
11月8日
オリンパスの粉飾決算が発覚。
11月22日
東京地検特捜部が井川意高・大王製紙会長を「巨額借り入れ」による特別背任容疑で逮捕。
12月19日
国民的ドラマ『水戸黄門』の放送終了。