新型海賊船クイーン芦ノ湖

 箱根の芦ノ湖を巡る新しい海賊船がデビューするので試乗会に参加しないかとの案内をいただいた。鉄道ではないので、最初はどうしようかなと思ったのだが、デザインしたのが水戸岡鋭治氏と聞いて、俄然興味が湧いてきた。JR九州の各種観光列車を担当してきた水戸岡鋭治氏が船をデザインするとどうなるのか実際に見てみたかったからだ。それと、しばらく箱根のロープウェイに乗っていなかったので、この際、広い意味で鉄道の範疇に入るロープウェイをはじめ、ケーブルカー、登山電車、そして小田急ロマンスカーに乗りつぐ旅を体験取材したいと思い、箱根まで出かけることにした次第である。

 芦ノ湖の新型海賊船は「クイーン芦ノ湖」と命名され、その名の通り、女王陛下の船という気品さをたたえ、海賊船というエンタテインメント性をとどめながら、上質なリゾート感覚を味わえる空間となっている。金色の船体は海賊船らしいごてごてした怪しげな雰囲気を醸し出すと同時に、ゴージャスな雰囲気もある。予想通り個性的な外観に仕上がっていた。
 船内への入口は、水戸岡氏がデザインした列車のドアを思い起こさせ、独自の非日常的な夢の世界へといざなってくれる。まずは、階段を上って2階へと足を運ぶ。階段だけをとってみてもサイドや天井、床のデザインが斬新だ。さっさと通り過ぎるだけではもったいないので細部のデザインを観賞しながら上って行く。

女王陛下の玉座
水戸岡デザインの船内

 2階の特別船室には黄金の壁を背にして女王陛下の玉座が堂々と配置されていてよく目立つ。イベント用のステージというよりは記念写真コーナーの役割を果たしていて、「インスタ映え」する場所として活用できるようにしたとのことだ。デッキに設けられた8ヶ所もの見張り台も「インスタ映え」する場所として造られたといい、観光船らしいアイデアである。一般席は落ちついたウォールナット材で仕上げ、様々な色、形、素材を古今東西のデザイン様式で曼荼羅のように配している。列車でお馴染のデザインも船の場合はスペースにゆとりがあるせいで、よりバラエティに富んだ大掛かりな空間となっている。
 金塊のイミテーションをガラスケースに飾ったり、古代ギリシャの「サモトラケのニケ」を模した船首の女神像など、遊び心も満載で楽しい船旅となった。

芦ノ湖の箱根神社の平和の鳥居

 天気が良ければ、富士山の麗姿も見え、湖畔にたたずむ箱根神社の「平和の鳥居」とともに船から見える景色のポイントとなっている。1時間かけて芦ノ湖を一周してもいいし、箱根町港から元箱根港を経て桃源台港まで40分程の片道の船旅を楽しんでも充実した時間が過せること請け合いだ。

桃源台~大涌谷を結ぶロープウェイ
大涌谷

 桃源台港で船旅を終えると、今度はロープウェイに乗る。案内板に従って進めば簡単に乗り換えられる。次々とやってくるゴンドラに乗りこむ。18人乗りなので、混んでいると好きな席には座れないけれど、高いところからの眺めは雄大だ。発車してしばらくすると、後ろに芦ノ湖が見えてくる。姥子駅を経て16分で大涌谷駅に到着。ここで別のロープウェイに乗り換えとなるが、急ぐ旅でもないので、駅前にある大涌谷の噴煙地をちょっとだけ展望台から眺める。硫黄の臭いが鼻につき、荒涼とした土地に白煙が上る。地獄谷と呼ばれるのも納得の不気味な風景である。

大涌谷~早雲山を結ぶロープウェイ
ロープウェイ車内

 次に乗るロープウェイは、いきなり地獄谷の上空に差し掛かり、見下ろすと足が震えるような高低差に気が遠くなるようだ。ゆっくり進むので、もっと速くてもいいのにと思ってしまう。断崖を越えると、あとは早雲山駅へ向けてゆっくりと降りていく。8分の乗車時間は、大涌谷までの経路よりも迫力があった。到着すると、何だかホッとするスリリングなミニトリップだ。

早雲山~強羅を結ぶケーブルカー
ケーブルカーの公園下駅

 今度は、強羅駅までのケーブルカー。線路の上を走るので、ロープウェイよりははるかに鉄道らしくてよい。ただし、設備の関係で昼間は20分に1本程度しか運行されないためもあって満員。発車時間が迫っていたので、残念ながら座れなかった。もっとも、所要時間10分なので、許容範囲であろう。各駅は両側にホームがあるけれど、上強羅駅と中強羅駅は、踏切や立体交差の道路がないので、下車ホームの左右を間違えると悲惨なことになる。下から上ってきたケーブルカーとすれ違い、公園上駅を経て公園下駅に到着。終点の強羅駅ホームが見えていることだし、立ちっぱなしだったので、気分を変えるために下車した。急勾配の傾いたホームには、今更ながら驚く。
 強羅公園に立ち寄ろうかと思ったが、箱根湯本駅発のロマンスカーの時刻が決まっていたので、入口前を通るだけにして、ぶらぶらと坂を下りていく。下って行きさえすれば強羅駅にたどり着けるので、それほど心配することはない。しばらくすると登山電車の踏切の警報音が聞こえ、ほどなく強羅駅が見えてきた。

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