新元号が発表される4月1日が近づいてきました。天皇陛下は、昨年12月24日の記者会見の席上で、「平成が戦争のない時代として終わろうとしていることに、心から安堵しています」と述べられましたが、確かに、近代天皇制が確立してから後の、明治、大正、昭和という3つの時代は、「戦争」に翻弄(ほんろう)されてきました。これに対し、ようやく平成という時代が「平和」のバトンを持ってスタートし、いよいよ次の走者にそのバトンが手渡されることは、本当に喜ばしいことです。ぜひこの格好の機会に、元号について学び、元号、そして日本の将来像を考えていただければ幸いです。

■元号の出典は?

 これまで、元号の出典として用いられてきたのは、中国の古典である「四書五経」、すなわち『大学』、『中庸』、『論語』、『孟子』の四書と、『易経』、『書経』、『詩経』、『礼記』、『春秋』の五経でした。「四書五経」は、既に江戸時代には諸藩が設置した藩校や、村々の寺子屋でもテキストとして用いられており、明治維新に伴って西洋の学問が導入・普及されるまでは、最も日本人に親しまれていた学問の拠り所でした。それでは、近代以降の元号の出典を検証してみましょう。

 

■「天下は明るい方に向かって治まる」…「明治」

 「明治」は、『易経』の「聖南面而聴天下、嚮明而治」を出典とし、「明」と「治」を組み合わせたものです。これは、「聖人が南を向いて政治を行えば、天下は明るい方向に向かって治まる」という意味です。また、もう一つの出典とされている『孔子家語』(『論語』に漏れた孔子一門の説話を収めたもの)の一節「長聡明、治五気」は、「成長してからは聡明で、万物の根本である木火土金水の五つの気を治めた」という意味になります。

■「すべてとどこおりなく順調に運び、正しさを得る」…「大正」

 次の「大正」も、『易経』の「大亨以正、天之道也」を出典とし、「大」と「正」を組み合わせています。これは、「すべてとどこおりなく順調に運び、正しさを得る」という意味です。

■「国民の平和と世界の共存共栄を願う」…「昭和」

 「昭和」は、『書経』の「百姓昭明、協和万邦」から、「昭」と「和」を組み合わせたものです。「国民の平和と世界の共存共栄を願う」という意味です。この時、 新元号の発表に先立って、『東京日々新聞』 は新元号を「光文」とする号外を発行しましたが、発表された新元号は「昭和」でした。この件は、今なお「世紀の誤報事件」と呼ばれていますので、御存知の方もおられるのではないでしょうか? ちなみに、「昭和」の元号が用いられた64年の歳月は、歴代の元号の中でも最長となっています。

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