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万国共通の愛情表現「キス」。その絵文字・顔文字にも文化の違いがこんなに出る

絵文字進化論第5回

■日本では「キス」の略がない理由

 最後に日本での「キス」はどうでしょうか?

 日本の顔文字では、キスのために突き出した唇を表すパーツとして、ギリシア語のアルファベット「 ε 」エプシロンが代表的です。

 向きによっては数字の3も使われたりします。とてもかわいい形で、横から見た突き出した唇にぴったりなので、初めて見た時に感心しました。

(^ε^)-☆Chu!!
ヽ(○´3`)ノ チュゥゥゥ
☆・゚:*チュ━(*´з)(ε`*)━━*:゚・☆
(´・з・)  (=ε=) 

 ただ、受け取り方は様々です。例えば(^ε^)という顔文字について、「キスの顔文字だと思ったことがありません」「喜んでいる、笑っている意味だと思っていた」のような意見もみかけます。(https://oshiete.goo.ne.jp/qa/1656850.html

 日本の漫画ではこのような尖らせた口が、キスと無関係で使われていることも影響しているでしょう。

口を尖らせたドラえもん

 日本のキスの顔文字のもう一つの特徴は、どれもとにかく長いことです。

 Chu! や チュッチュ といった擬音語つきだったり、❤がついたりして、イギリスのxやポルトガルの * のようにコンパクトな表現がないようです。(^ε^)から口だけをとって、εで「キス」を表現できそうですが、どうでしょうか?

 よく使われる表現は略される傾向があります。結局、挨拶としてのキスが馴染まなかった日本では、「キス」がそれほど頻繁に使われる表現ではなかったということでしょう。

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シャルコ・アンナ

1988年生まれ。ロシア、シベリア地方出身。地元の大学で日本語を勉強し始めたことをきっかけに、日本の文字文化に魅了され、国費留学生として来日。2012年に早稲田大学の大学院に入学して、笹原宏之教授の元で日本語の文字・表記について研究を続けてきた。ポルトガル人と国際結婚して、1歳の息子を子育て中。現在はイギリスに在住。


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