幅1メートルの小径の先には天然の魚とおいしい日本酒

 地下鉄烏丸線と東西線がクロスする烏丸御池は、南側はオフィスや飲食店が多く賑わいを見せる一方、北側は住宅も立ち並ぶため、夜ともなると人通りがぐっと少なくなる。『笹蔵』があるのは、その北側だ。

うまい魚と日本酒へと誘う魅惑の小道。この看板に灯りがつくと、開店の合図。

 戸を開けると、カウンターの中の西村陽三さんが「いらっしゃい!」の言葉とともに、にこやかな笑顔で迎えてくれる。西村さんが立っている後ろの棚には、同じ笑顔の似顔絵が。聞けば、お客さんや知り合いの子どもが描いてくれたものなのだとか。アットホームな雰囲気に、路地を進んでいるときの緊張感がほぐれてくる。

飾られた似顔絵からも、西村さんの優しい人柄と、地元の人に愛されている店であることが伝わってくる。

『笹蔵』が開店したのは1990年のこと。それまで寿司職人として魚を見る目を鍛えてきた西村さんは、魚と日本酒にこだわった店を開こうと、満を持して独立。魚は天然物にこだわり、 その時に一番よいものを求め現地から取り寄せることもある。本ししゃもなら北海道鵡川のもの、鯛は瀬戸内海産、ウニは淡路島産と、長年の経験でこれという食材を選んでいるのだ。

手前右から時計まわりに、うざく(時価)、 本ししゃも(1匹300円)、ポテトサラダ (700円)、さざえからあげ(700円)、とり肝ソース漬(700円)。どれも逸品だ。  

 お目にかなった魚介がショーケースに並ぶ。 酒のつまみになる一品も見逃せないものばかり。たとえば「とり肝ソース漬」 は、とり肝をソースに漬けることでく さみが気にならなくなるのだという。何を食べようか迷ったら、カウンターの上に並ぶ鉢に盛られたポテトサラダなどを楽しみながら、次の一品を思案するのもいいだろう。

ショーケースの中の食材についても丁寧に説明をしてもらえる。そこから時には客と食談議、日本酒談議に花咲くこともある。

 西村さんのもう一つのこだわりは、日本酒。料理との組み合わせ方にも決まりごとがあるのかと思い聞いてみると「好きなものをどうぞ」との答え。真意を尋ねると、「酒匠」の資格を持つ西村さんが〝料理を選ばないもの〟を厳選して置いているので、どの日本酒をオーダーしても、料理との相性の良さは折り紙付きなのだという。 日本酒の初心者であっても、この店ならば難しいことは考えず、思いのままに食べ、飲み、長い夜を過ごせることだろう。

 

酒亭 笹蔵
住所:京都市中京区御池通間之町上ル高田町509-4
☎075-252-3210
営業時間:18:00~23:00
定休日:火曜日
地下鉄烏丸御池駅から徒歩約5分

※月刊誌「一個人」4月号より抜粋