注文をまちがえる料理店

連載「母への詫び状」第三十七回〉

 

「頼んだものと違う料理が出てきても『まあ、いっか』と受け止めてください」

 認知症の人たちへの理解を深め、寛容な心で受け止めてもらうための民間プロジェクト「注文をまちがえる料理店」がニュースになっていた。
 認知症の高齢者が飲食店のスタッフとなって注文を取り、配膳をする。今回は厚生労働省の庁舎内にある中国料理店における、2日間限定の催し。小泉進次郎衆議院議員が、認知症の店員とやりとりする様子などもニュースで流された。

 ただ、ここまで書くのにも、言葉選びに結構な気を遣う。
「認知症の患者」はまずいようだから「認知症の人たち」と表記したほうが良さそうだ、とか。「寛容な心で受け止めてもらうための民間プロジェクト」より、「寛容な心で受け止めてもらう環境を作るための官民一体の実験的な試み」としたほうが正確だろうか、とか。

 そもそも、認知症は病気であるという認識を持つべきなのか。いや、認知症なんて誰でもなるのだから、病気扱いはやめて“普通扱い”しましょうよという立場に寄るべきなのか。そこからもう、わからない。

 認知症の家族を持った身としては、あれは社会適応の難しい病気であるという前提に立ったほうが適切な対処をできると思っているが、この「注文をまちがえる料理店」がめざしているのはそっちではないようだし、でもプロジェクト自体は応援したい。自分の中にも矛盾がある。

 厚生労働省の職員に向けた啓蒙イベントなら、いっそ厚労省の職員と、厚労族の議員は全員、実地研修として「週に1度、特養の夜間勤務のヘルプ」を義務付ければいいのに、とも思う。