上を見ればキリがないのと同じで、下を見ればキリがない。だとしたら選択肢は一つしかない。上を見て、上に学ぶことだ。下を見て憤慨していても時間の無駄である。もちろん、社会生活を送っている以上、それをゼロにはできない。しかし、下に対応する時間を最小限に抑え、偉大なものに触れなければ先はない。今回『遅読術』を刊行した作家の適菜収氏は「結局バカはばれる」と言う。一時的に成功する人はいるが、小手先のテクニックでは長続きしない。10年20年と生き抜くためには、何を読み、何を学べばいいのか。適菜氏に聞いた。

■「なんとかなっている人」は本を読む

 

 世の中にはなんとかなっている人ととりかえしがつかない人がいる。

 なんとかなっている人は、どこかのタイミングで自分を救えるのは自分ではないと気づいた人だ。

 自分の力などたかがしれていると。

 だから、彼らは本を読む。

 一方、何を言ってもムダな奴は存在する。

 彼らは無知であるがゆえに、博学であるがゆえに、自信に満ちている。

 

 こうした人たちが、世の中をどんどんとりかえしがつかないものにしていっている。

 今必要なのはスピードではない。

 立ち止まることだ。

 答えを出すことではなくて、考え続けることだ。

 ゲーテは言う。

 たとえ、世界が全体として、いくら進歩したところで、若者は、やはりいつの時代にも、最初の地点から出発し、個人として世界文化の進化の過程を順を追って経験していく以外にないのだ(エッカーマン『ゲーテとの対話』)。

次のページ 読書にスピードはいらない