■素材で劣っていても関係ない。構築したヤマハスタイル

 選手は少ない。しかも才能のある好素材はなかなか入ってこない。だが、だからこそ見いだされる才能もいる。その象徴が小さな英雄たちだ。

 フッカー日野剛志は身長172cmの小兵ながらスクラムを支え、FW第1列とは思えない運動量でトライを量産。身長178cmの三村勇飛丸は2m級が並ぶFW戦で低いタックルを反復し、2人は日本代表にまで上り詰めた。CTBの宮澤正利は170cmの小柄な体で190cm、100kg級の相手に激しいコンタクトを繰り返した。選手の大型化が進むトップリーグにあって、他チームなら門前払いになるような小兵たちの活躍に、大学生の間にはある噂が立ったという。

「ヤマハに行けば何とかなる。小さい選手でも試合に出られる……そんな話が、大学生の間に都市伝説みたいに広がって、またそういう選手がトライアウトに来てくれるようになりました。今季、5年目でトップリーグにデビューしたフランカーの粟田(祥平)なんて、関西学院大時代はWTBで最高でも4軍。それがトライアウトを受けてヤマハに来て、FWに転向してチャンスを掴んだ。自分の強みがあれば、ヤマハに来れば何が起きるか分からない。それがチームのカルチャーになりました」

 他のチームとは違うヤマハのカルチャー。それは外国人選手にも徹底される。

「ニュージーランドとかからトップリーグに来る外国人選手たちは『世界ではこれが常識だ』みたいなことを言いたがるけど、ヤマハの場合は、新しく来た選手に向かって、もう10年もヤマハでプレーしているモセ・トゥイアリイ(元オールブラックスNo8)のような選手が『お前はヤマハに来たんだからヤマハスタイルでプレーしろ、それがプロフェッショナルだ』と言ってくれるんですよ」そんな集団だから、マレーシア代表、19歳でラグビーを始めたという異色のキャリアを持つロックのデューク・クリシュナンのような選手も活躍の場が得られた。体が小さい、足も速くない。たまにいる大きな選手はラグビー素人……そんな選手の集団が、アスリート揃いの他チームと渡り合い、日本一を掴んだ。

 素材で劣る側が勝つためにはさまざまな、周到な仕掛けがあった。

 小さな選手が大きな相手にコンタクトプレーで勝つために、トップリーグでは先陣を切ってレスリングトレーニングを導入。選手たちは早朝、独身寮に併設されたトレーニングルームで体のぶつけ方、重心の取り方を反復練習した。チームの最大の武器である五郎丸歩のゴールキックを最大限に活用するために、スクラムやラインアウトのセットプレーでは、相手の反則を勝ち取ることがチームのコンセンサスとなった。自分たちの武器を知ることで、戦い方がよりクリアになる。

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