「疲れやすいし、眠れない……」「このところ、髪が良く抜ける……。カラダもだるい」。健康診断では「特に問題はなし」なのに、なぜか「ココロとカラダが不調」という人は少なくありません。2年先まで予約がとれない精神科医の奥平智之先生が、あなたの悩みにアドバイスします(『血液栄養解析を活用! うつぬけ食事術』をもとに作成)。 
文/奥野英美

Aさんの悩み : 仕事のストレスもあり、ここ数ヶ月、疲れやすく、眠りが浅

まんが/にゃんとまた旅/ミューズワーク

く、気分が晴れない状態が続いています。朝起きられないので会社に遅刻したり、仕事でのミスも増えたりして、困っています。うつ病なのでしょうか? 健康診断で血液検査などは、特に問題はないのですが……。 

 

奥平智之先生(以下、奥平):“うつ状態”が数ヶ月も続いているとのこと、かなりつらいですよね。一緒に不調の原因を探って行きましょう。まずは、昨日のお食事内容を教えてもらえますか?      

Aさん:朝はトーストとサラダ、コーヒーです。昼はピザとサラダ。おやつはチョコレートとコーヒー。晩はパスタとサラダ、ワインです。

奥平:肉や魚、卵などの動物性のタンパク質はあまり食べないんですね。お米ではなく、パンやパスタなどの小麦製品が多そうですね。疲れやすいなどの症状から、うつ病の可能性もありますが、お食事の内容も考慮すると「栄養型うつ」の可能性もありそうですね。

Aさん:「栄養型うつ」?

奥平:はい。「栄養型うつ」とは、栄養の問題を解決するだけで、よくなるうつ状態のことです。
 鉄やタンパク質、亜鉛などの栄養の問題で、うつ病のような症状が出ることがあるんです。私が定義した「栄養型うつ」には、主に6つのタイプがあります。Bタンパク欠乏うつ、コレステロール欠乏うつ、鉄欠乏うつ、亜鉛欠乏うつ、マグネシウム欠乏うつ、ビタミンD欠乏うつ。複数が重なっている場合もあります。
 まずは、血液検査で、栄養の問題がないかをチェックしてみましょう。

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Aさん:健康診断の血液検査は全て基準値内で、特に問題はないのですが……。

奥平: 検査結果が検査会社の基準値内入っているということは、大きな問題、つまり明らかな病気はなさそう、ということです。
 でも、栄養面から結果を“深読み”してみると、いろいろな栄養の問題が隠れている可能性が見えてきます。そして、栄養面を改善すると、疲れやすい、憂うつ、不安、イライラ、眠れない、食欲がない、やる気がでない、注意散漫、もの忘れなどのココロやカラダの症状が改善することがあります。
 
つまり、うつ病という精神の病ではなく、栄養面が原因でうつ状態になる人もいるということです。

Aさん: 栄養の問題で、うつ状態になるんですね。それはどうしてですか?

奥平: キーワードは、「ミトコンドリア」と「脳内ホルモン」。ミトコンドリアは全身のエネルギーの産生工場。エネルギー産生には、脂質、タンパク質、糖質だけでなく、鉄やビタミンB群などの栄養素が必要なんです。必要な栄養素が足りないと、エネルギーが作れず、疲れやすいだけではなく、全身の細胞の機能が低下してしまいます。脳の神経細胞のエネルギーも、細胞内のミトコンドリアで作られます。栄養の問題は、神経細胞の機能に影響を与え、本来の脳の働きを低下させてしまいます。

栄養がエネルギー再生の要。

 次に、脳内ホルモン(神経伝達物質)。セロトニンとか、GABAって聞いたことがありますか?セロトニンは幸せホルモン、ノルアドレナリンはやる気ホルモン、GABAはリラックスホルモン。これらがスムーズに作られてバランスが保たれると、ココロのバランスも保たれるんですが、
 そのためには、鉄や亜鉛、マグネシウムなどの栄養素が必須。栄養に問題があると、憂うつになったり、やる気が出なくなったりするのは、脳内ホルモンのバランスが崩れるからなんです。

Aさん:なるほど、栄養の問題でうつ状態になるんですね。じゃあ、食事や栄養を改善すれば、病院に行かなくても大丈夫なんですね。

奥平:いいえ、自己判断は危険です。ココロの不調が2週間以上続く場合は、うつ病などの精神疾患の可能性もあるので、精神科や心療内科などの医療機関を必ず受診して、専門の先生に相談してください。内科の先生でも構いません。まずは、詳しい「血液検査」をしてもらいましょう。
 また、うつ病や躁うつ病、パニック障害などの診断であっても、栄養型うつが重なっている人も少なくありません。栄養の問題を解消することで、抗不安薬や睡眠薬などのお薬が減らせたり、薬の効きがよくなったり、薬の副作用が減ったりすることもあります。

Aさん:わかりました。ありがとうございます。血液検査、してもらいます!